学校生活は、日々の積み重ねです 

  2005年、春。テレビではこんなコマーシャルが流れました。通信教育で有名な塾の最新のテ レビコマーシャル。

 「かえるのうたがー、きこえてくるよー、
  グァッ、グァッ、グァッ、グァッ、
  ケロケロケロケロ、グァッ、グァッ、グァッ」

 子供の頃、よく輪唱をした、あれです。そのメロディーにのせた替え歌...

 「小学生から○会、勉強するなら○会、
  東大、京大、早稲田、慶応、すいすい合格○会」

 画像としては、真面目そうな詰め襟の中高生が本?参考書?を読みながら歩いていると、後ろから一輪車に乗った、黄色帽子にランドセル、といういでたちの小学生がやってきます。いかにも一輪車は「すいすい」という感じなのです...
 私は、苦笑をしながらも、あまりに短絡的なCMに、悲しくなりました。なんだこりゃ?という感じです。もちろん、進学塾というところは学校と違い、「何とか志望校に無事に合格させる事」に使命があります。ですから、親の思いにスバッと突き刺さる、インパクトのあるキャッチコピーで生徒を集める事が何より大切ですね。それを思えば、このものすごく直接的なCM は、確かに世間の親の度胆を抜き、語りかける事には成功したでしょう。(ちなみに、このCMの歌詞、関西では、東大、京大、阪大、神大、となっている、という事を聞いた事があります)

 そこで私は、なぜ、私がこのCMを見て薄っぺらだと思い、悲しくなってしまったのか?を考えてみました。
 そう、そうなんです。私は、このCMそのものというよりも、このCMが言う通り、「小学生から○会で勉強をしたら、すいすい有名大学に合格するよ」と言われて、ホイホイその気になり、「小学校から夢の大学を目指させてしまう親」がいるであろうことに、そしてそういう親達の浅はかさに、私は情けなくなってしまったのだと思いました。
 私事で恐縮ですが、一番語り易いので、私の息子や、息子の学校を例にとってお話をいたしましょう。
彼は、横浜の私立小学校から、中学受験を経て、都心にある私立の中高一貫校に進学しました。彼の母校からは、毎年、浪人生を含めて、東大に100名前後の生徒が進学します。1学年300名という数字を考えれば、浪人を含めても100名というのは、かなりの人数ではあります。
 そんな学校で多感な6年間を過ごした息子は、浪人をし、高校生でも大学生でもない、ちゅうぶらりんの立場に突入したのでした。幼稚園入園以来はじめて訪れる、肩書きなし?の名前だけ。まあ、確かに△△予備校の○○くん、でもよいわけですが、何の縛りもないそれはちょっと違うでしょう。
 そして私は、幸か不幸か唐突にやってきた息子のちゅぶらりんの時間の中で、彼の小学校での6年間、そして中高での6年間を、しみじみと振り返りました。
 思いだしてみると、いろいろありました。次から次へと思い出される様々なシーン。小学校の頃の学芸会、運動会、息子の泣いている顔、仲間達の爆笑している顔、おどけている顔、真剣に全員で取り組んでいる顔... 中学入学後の6年間などは、公のところには書けないような事もたーくさんありました。父親に内緒の事もたくさんあります。外からは順風満帆に見えたであろう中高の6年も、実際には語り尽くせない多くの事があったのです。
 しかし、私は実感したのでした。彼の小学校の6年間、中高での6年間、どんなに彼にとって逆風の時であっても、息子はイキイキと生きていたなあ...心からそう思います。そして、彼のまわりの友人達も、みんながいつもピカピカ輝いて生きていました。私が知っている生徒達の12年間の生活などは、実際の学校生活のほんの一部でしょう。実際には、小学校80人には80通りの、中高300人には300通りの、波乱万丈の学校生活があったのです。
 だから!!
私はやっぱり声を限りに叫びたい!何より子供達にとって大事な事は「おーっと言われる中学、高校、大学に合格する事」ではなく、「いかに意味ある12年間の学校生活を送るか?」という事だ、と。
 もちろん、どんな事でもいい。しっかり学業を修めるも良し。クラブに燃えるも良し。生徒会でがんばるも良し。いやー、がんがん自由を謳歌したぞ!でもいいじゃないですか。学業だけではない、とにかく、「12年間、この学校で生きたぞ!」という手ごたえのある年月を送る事!
 なぜなら、男の子でも女の子でも、12年間にも及ぶ学校生活の意味や目標が大学合格であるのならば、まるでそこは「予備校」じゃないですか??? 「○○校目指して、オー!」ではないはず!

 親が「夢」を描く時、わが子が「どんな毎日を送るか?」という事には、あまり思いはいかないようです。でも、考えてもみてください。小学校入学が6才か7才。高校卒業が17才か18才ですよ。子供から大人になる時期です。
 そんな長い長い12年間、小学生の頃から、「東大、京大、早稲田、慶応...」と、それだけを頭の中に響かせながら日々を送るのは、あまりにもったいない!違うでしょうか?
 
 私は、様々な意味で「豊かな人」が本当の意味で素敵な人だと常々考えています。そして、その豊かさとは、学校生活を含む、幼い頃からの生活にベースがあるのだと思えてなりません。「頭脳明晰」でも「心や思考が貧困」であれば、ちょっと悲しい...でしょう?
 もちろん、息子の友人の中にも、とっても有意義な小学校の6年間を送り、泣き笑いの充実した中高の6年を送り、魅力的な青年に成長しながらも、ちゃーんと現役で立派に大学進学をした人もたくさんいます。
 やっぱり最強は、どのように生きるか?をしっかりと考えられる人、かもしれません。
そして、「どのように」の部分にさまざまな絵が描けるのは、たくさんの事を経験し、その経験を十分に自分のものとして消化し、多方向からいろいろな考え方が出来る人だからなのでしょう。
 「考える人」として育つには、やはり幼い頃から、きちんと自分で考えさせる習慣を持たせなければいけません。

 そういう子供達に育てるべく、正しい意識を持ち、エールを送ってやるのは、ご両親!その責任があるのです!

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